2007 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞の膜コンダクタンスに着目した単球の内皮細胞下侵入機構の解析
Project/Area Number |
18700420
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
氷見 直之 Kawasaki Medical School, 医学部, 助教 (70412161)
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Keywords | 動脈硬化 / 血管内皮細胞 / 単球 / パッチクランプ / イオンチャンネル |
Research Abstract |
本研究は、動脈硬化病巣形成の初期過程である、血管内皮細胞への単球の接着から内皮細胞下侵入開始までの過程において、内皮細胞膜を通過するCaなどのイオンの変化を電気生理学的手法でリアルタイムに測定し、解析することを目的として計画された。 カバーグラス上に培養したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を37℃に保持した緩衝液潅流下に設置し、正立顕微鏡観察下にてガラス電極よりHUVECの細胞膜の電気的特性をwhole cell patch clamp法にて記録した。我々はこの手法の確立に成功し、IL-1βにて刺激されたHUVECに単球株細胞(THP-1)が接着、浸潤する時のHUVECの電流-電位特性の変化を経時的に記録した。電流-電位特性は、膜電位を-140から+80mVまでスキャンさせて電流を経時的に記録する方法で得た。その結果、HUVECの膜は、単球の接着により脱分極時の外向き電流が大きくなる傾向が見られた。一方、静止電位付近では単球の影響は見られなかった。内皮細胞膜上で単球が接着や浸潤を行うプロセスの誘発には、内皮細胞内のCa濃度の上昇が伴うとの知見があるが、どの過程でCaが動員されるかは不明であった。本研究の結果では、単球付与直後から膜電流の変動が見られており、シグナル伝達や媒介分子の発現とは別の非常に短い時間で起こるイオン電流変化が確認された.単球により生じた外向き電流の増幅は、内皮細胞に存在するCa感受性Kチャンネルを通るKイオンの透過性が増幅されたことに起因すると推定される。単球付着直後に細胞内でCa濃度が上昇し、Ca感受性のKイオンの流出による過分極を介してさらなるCa流入を誘発させ、単球の浸潤を促すシグナル伝達系を作動させる機構が考えられる。動脈硬化の初期段階に生じる内皮細胞模のイオン電流の変化をとらえ、動脈硬化治療へ一歩前進する知見を得られたと考える。
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