2006 Fiscal Year Annual Research Report
生理機能の総合モデルに基づく病態の定量化とその制御
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18700448
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
陸 高華 独立行政法人理化学研究所, 生物制御システム研究チーム, 基礎科学特別研究員 (00392176)
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Keywords | モデル / 病態生理 / 制御 / 救急 / 脳低温療法 / 脳温 / 頭蓋内圧 |
Research Abstract |
患者生理モデルを用いた理論解析は治療行為の評価、患者の予後予測、治療方策の設定、ひいては診断法や治療法そのものの発展に重要であり、その臨床的、理論的意義が極めて大きいと考えられる。本研究は患者の呼吸系、循環系、代謝系、酸塩基系、神経系の生理機能の相互作用を総合的にモデリングし、基本生理状態と臨床処置との定量関係を中心にした患者の病態生理機能モデルを構築すると同時に、臨床への応用のためのロバスト性を備えた生理機能の適応制御システムを確立する。脳低温療法に特化した複数の病的生理機能の集中管理法の発見は、脳低温療法の臨床に有益だけではなく、集中治療室における他の重症患者の全身管理およびそのための医療チーム編成にも有意義であり、理論的にも「システム医療」の実現につながると期待される。本年度は、脳低温療法の頭蓋内圧降下効果、患者の頭蓋内圧と脳温の集中管理、ならびに脳低温療法のための呼吸管理に焦点を絞って研究を行ってきた。具体的には、生体の解剖学の構造と生理学の機能を基に、生体を集中コンパートメント構造で近似し、温熱系、呼吸系、循環系と薬理系からなる患者の基本生理機能を統合的にモデリングした。次に、脳低温療法の臨床実際を考慮し、低温冷却による頭蓋内圧効果を構築した統合モデルを用いて始めて定量化した。また、体表冷却と利尿剤投与による脳温と頭蓋内圧の集中管理をシミュレートし、臨床処置と生理状態との間の定量関係を表す伝達関数行列を同定でき、脳温と頭蓋内圧の非干渉制御システムを設計した。統合モデルを脳低温療法の臨床の患者の代わりとして、モデルの脳温と頭蓋内圧の非干渉制御の有効性を検討した。さらに、構築した生理機能統合モデルを用い、健常と病態との間の距離を患者の病態の重症度として定量化し、そのシステム制御を行う予定である。
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