2006 Fiscal Year Annual Research Report
精神科リハビリテーションからみた初発統合失調症患者の25年転帰
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18700461
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
稲富 宏之 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (10295107)
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Keywords | 精神科リハビリテーション / 統合失調症 / 長期転帰 / 認知機能 |
Research Abstract |
本研究は、初発統合失調症患者の25年目の転帰決定要因を探索するために社会心理学的側面、生物学的側面、及び認知的側面について分析した。 対象は、長崎大学社会精神医学研究班が実施した15年転帰調査(1995年)の資料に基づいて、対象者が通院していた医療機関または家族に対して本研究の目的と方法について書面で説明して承諾を得た男性4名と女性6名の計10名の群である。全ての対象者は医療機関で治療継続中であり、入院治療及び外来通院が各々5名であった。対象群は、年齢(以下、値の表記は中央値(最小値-最大値))が47.5歳(42-72)であり、未治療期間が6か月(1-25)であった。 対象群の社会心理学的側面の評価として陽性・陰性症状評価を実施した結果、陽性症状得点は18点(7-30)、陰性症状得点は19.5点(8-37)、総合精神病理得点は34点(19-60)であった。そして、対象群の社会的機能の全体的評定尺度は41.5点(25-81)であった。 また、対象群の生物学的側面のデータとして脳由来神経栄養因子の血中濃度を測定したところ、35.5ng/L(28-50.7)であった。 さらに、認知的側面の評価としてA4(210×297mm)の画用紙に描画する樹木画テストを実施して9名の対象者から樹木画を得た。9枚の樹木画は、描画のゲシュタルトを基準にした全体的印象、樹木画における形態と内容に関して評価した。全体的印象による分類では、ゲシュタルトの統合度が高い普通画3名、ゲシュタルトの統合度が低い異型画6名であった。形態水準の評価では描画面積は11585mm^2であり、画用紙に対して約30%の面積であった。内容水準の評価では、半数以上の対象者が枝や葉と果実及び人物や風景などを描画していた。 今年度の研究でこれらの結果を得ることができたが、統合失調症患者の転帰決定要因を社会心理学的側面、生物学的側面、及び認知的側面について探求するためにはより多くの対象者数のもとで詳細な分析が必要であることが示唆された。
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