Research Abstract |
本研究は,主に中等度から重度の誤嚥を伴う嚥下障害(ワレンベルグ症候群など)患者を対象として,咽頭挙上を適切なタイミングと強さで行わせる経皮的電気刺激装置の開発を目的としている.電気刺激装置は,村岡が開発した筋電導出兼電気刺激装置を改変し応用する.本装置は,患者自身の随意的な筋活動を検出し,それに呼応して電気刺激を行うことが可能であり,より自然に近いスムーズな嚥下動作再建が期待できる.また,本装置は,刺激電極を記録電極としても兼用していることから,埋め込む電極数を半分にすることができ,埋め込み時間の短縮と,侵襲の低減化が可能である. 最終年度となる平成20年度では,研究代表者が年度途中で転職となったため,当初予定していた脳卒中患者2名における試作装置の検討はできなかった.しかし,平成19年度に脳卒中患者2名において得られた針筋電図による筋電波形をもとに,それに対応した周波数帯域のアンプを再設計し,施策を行った.試作装置のサイズは,75×56×18mm(電池部は含まない)であり,名刺小のポケットサイズとなった.研究代表者自らが被験者となり,局所麻酔の皮下注射を用いて顔面神経麻痺を作成した.さらに,非麻痺側の前頭筋の筋電位を検出し,それに比例した強度の電気刺激を麻痺側同名筋に対して行い,眉毛挙上動作の左右対称性により,本装置の動作確認を行った.その結果,最大で,50ms程度の収縮に遅れがあるものの,ほぼ左右対称の動作が実現された.嚥下使用時においては,この遅延は,影響があることが想定されることから,許容できる遅延時間を明確にするとともに,刺激パルス間隔短縮化や,電気刺激を行う筋肉に対して先行して収縮する筋電検出筋の選定などをさらに検討する必要があることが明らかになった.
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