Research Abstract |
高齢者の介護費,高齢者医療費の問題が社会的問題であり,対策として転倒予防が求められる.そのため介護予防が提案され,身体機能向上の試みとして,運動やケアの実施が行われているが,転倒予防に重要である下肢筋力の定量的評価は行われていない.その要因の1つとして簡便な評価機器や指標が開発されていないのが原因であると考えられる.そこで本研究では,簡便に下肢筋力を評価するための機器を開発するために,膝間力計測器を作成した.膝問力計測器は,股関節内転筋群を計測・評価し,主に,歩行に重要な大内転筋などの股関節内転筋群,中磐筋,ハムストリングスの一部などを評価することとなる.これらは日常生活を支える重要な筋であり,下肢筋力の評価指標として利用価値があると考える. 平成18年度は,試作器の作成,電気生理学的検討,小規模フィールドテストを実施し,設計原理の正しさ,誰にでも簡便かつ安全に股関節の内転筋力の計測・評価が可能であることを確かめた.本装置に求められる要点には,(1)装置の構造上,荷重に対して直線的に変化し,かつ経時劣化しないバネの作成,(2)加圧部と膝部保護のためのクッション材の作成が求められた.本年度はこれらの作成に成功し,123名(平均年齢33.2±18.5,5〜87歳)の対象者の膝間力と申請者の開発した足指力を計測し,その比較を行った.その結果,膝間力と足指力の間には相関係数0.64が認められ,股関節内転筋力(膝間力)と下腿の筋力(足指力)は関係することがわかった.また,40歳代の中年層に比べて前期高齢者は膝間力が10%,後期高齢者は20%低下していることが認められ,転倒リスクを推定する基準となる膝間力の値が大まかに算出できた. 次年度は,運動などの介入による下肢筋力の変化について介入研究を実施し,本計測器の有効性と定量性の観点から転倒リスクを高める膝間力値を明らかにする.
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