Research Abstract |
平成18年度前半は,姿勢制御への末梢感覚神経活動の貢献を評価するうえで,筋・腱への振動刺激法が妥当であるかを,下腿三頭筋のH反射振幅より検討した.結果,三筋のH反射は30分間のアキレス腱への振動刺激によって一様に低下し,10分程度効力は持続するものの,その後の回復過程には筋間差がみられた.さらに興味深いことに,刺激停止20-30分後より,H反射振幅はむしろ増加するという結果も得られた.従って,この手法を姿勢制御研究に応用する場合,刺激停止後10分間程度ですべての測定を終了させるようなプロトコルの確立が必要であることが明らかとなった.これらの成果は,「筋感覚研究における機械的振動刺激法の有用性」と題して,平成18年9月に兵庫県において開催された第23回筋電図の会で発表した.今後は,実験被検者数を増やした後,原著論文を執筆予定である. また,近年,振動刺激法は,Iaフィードバック機能のみならず,大脳皮質運動野にも影響を及ぼすと報告されている.従って,振動刺激法を姿勢制御研究に応用する場合,皮質活動への影響も加味しなくてはならない.そこで,平成18年度後半には,静止立位保持中の皮質活動と筋活動との関連性を,脳波-筋電図コヒーレンス計測により評価した.先行研究では,随意筋収縮中にみられる20Hz帯域の脳波-筋電図コヒーレンスは,静止立位時には消失する,というのが一般的な理解であった.しかし,25名という多人数に対して測定を行った結果,必ずしもそうではなく,被検者間で差があることがわかった.このことは,二足姿勢保持という最も基本的な運動においても,その制御ストラテジーには個人差が存在することを示唆する.今後は,この脳波-筋電図コヒーレンス値と足圧中心動揺との関係性を解析することにより,脳レベル,脊髄レベルの神経活動と運動出力との因果関係を包括的に理解した上で,振動刺激法を用いた実験に移行していく予定である.
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