Research Abstract |
本年度は, 心理物理学的研究では, 1) ベイズ統合を可能とする事前分布を複数獲得できる条件の特定, 2) 感覚モダリティを越えたベイズ統合の普遍性の検証を焦点において, 研究を推進した. 1) の第一実験では, 触覚刺激の時間順序判断にあたって, 手がかりとして色刺激を与えても二つの事前分布をそれぞれに学び分けることはできなかった.しかし, i)その手掛かり刺激にともなって眼球運動を起こす, ii) 空間的手がかり刺激を与えることにより二つの事前分布の学び分けが可能になった. また, 随伴運動を口の開閉にしたところ, その学び分けはできなかった. このことから眼球中心のリファレンスフレームを基軸として複数の事前分布の学び分が可能となることが示された. 2) では, 独自に開発した時差順応中和法を用いて(詳細は, Yamamoto, Miyazaki, lwano, Kiatazawa, IMRF 2008), 音一光刺激の時間順序判断においてもベイズ統合が作用していることを観測することに成功した. 我々の提案した理論モデル(Miyazaki et al. Nature Neurosci 2006)は, 通常は時差馴応(ベイズ統合とは拮抗作用)が観測される視聴覚の時間順序判断でも潜在的にベイズ統合が機能していることを予見していたが, この実験成果により, その理論モデルの正しさが立証された. そして, fMRI測定では, タイミング一致課題では, 感覚情報に強く依存して課題を行っている場合には, 右の前頭前野, 運動前野, 後頭頂領域が強く活動していることが観測された. また, 事前に経験した確率分布に強く依存している場合には小脳等の脳部位の活動が増大する傾向が得られつつある. 今後, 十分な統計的有意性を確証すべく追加の測定・分析を進めていく.
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