2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本における聾学校体育実技授業のスタンダード確立に向けて
Project/Area Number |
18700497
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
内田 匡輔 東海大学, 体育学部, 講師 (00407983)
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Keywords | 授業分析 / ゲームブレーカー / 授業評価アンケート / 手話 / コミュニケーション |
Research Abstract |
今年度の研究は以下の点で研究を進めることができた。 1 授業記録の収集 まずこの研究の骨格となる授業映像の収集であるが、映像情報、アンケート資料は当初の予定の訪問回数を確保することが難しく、授業記録は15回となったが、4つの聾学校を訪問し、その内、3校は授業撮影の協力を得ることができ充分な資料を得る事ができた。全記録の内、10回の授業ではアンケートも実施することができた。これらの記録を、アポロ社製のゲームブレーカーで収録し、普通学校の体育実技授業で行われる授業分析と同様の項目で分析を行うことができた。 2 授業分析のフィードバック 上記の分析で得た授業分析結果については、複数回訪問することのできた聾学校の保健体育授業担当者に返却し、どのような感想を持ったか回答を得ることができた。 授業分析結果は、おおむね普通校と同様の結果を示しており、聾学校での体育実技授業運営は、普通校と変わらない事を示していた。結果を見た授業担当者からは、「普段意識していないが、無駄の時間のないように授業へ取り組んでいる」といった回答や、「生徒の授業での感じ方と自分狙っている部分とに違いがある」といった感想も得られており、今後の分析結果のフィードバックを求められた。 3 授業分析の多様化 従来の授業分析の手法に加えて聾学校の授業ならではの観点からも分析を行っている。収録済みの映像情報を分析する中で、コミュニケーション方法として、手話を中心とする身振り手振りといったコミュニケーションを運動指導場面で用いることが非常に多いことがわかってきている。この際、普通校での体育実技指導では、対象となる生徒が動きながら指導を受けていることが多いが、聾学校では、生徒は動きが止まって指導を受けているのも非常に特徴的と言える。 また、通常の学校に比べて、「教師の独り言」ともいうべき、言葉が多く見られているのも特徴的である。これは、授業分析上は「非機能」として良い授業をつくる上ではあまり重要視されない部分であるが、聾学校において「独り言」は、生徒の行動観察を行う上では、欠かせないものと言うこともできる。というのは、生徒数の少ない聾学校では、1人1人の顔を見て指導する場面が多く見られるからである。声に出して「○○何やっているんだろう」「△△上手くなったなぁ」等と言うことで、無意識に生徒を観察し、授業そのものの質を高めていると言うことができないか分析をすすめている。 4 今後の展開 上記で述べた分析をさらにすすめると同時に、さらに複数の学校で研究協力が可能であるか対象を広げ研究を深めていく予定である。また対象となる教師の経験年数等も同時に蓄積する必要性を感じている。
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