Research Abstract |
昭和60年ごろから低下傾向が顕著となった子どもの体力低下問題に対して,その総合的な対策の推進が期待される.先の答申(中教審,平成17年7月)にもあるように,初等教育段階の子どもたちにおいては「巧みに身体を動かす能力」,すなわち「調整力」をいかに育むか,そしてその「ミニマムとは?」について盛んな議論が行われている.そこで本研究では,子どもの「調整力」に関連する生活環境および運動プログラムに関する要因分析について研究動向を概観するとともに,今後の課題を展望した. まず,「調整力」発達に関連する生活環境条件の要因分析について先行研究を概観したところ,家庭や園など幼児の生活環境を取りまく環境要因が,日常生活の中での身体活動量や運動(遊び)の傾向に影響を及ぼすことが示唆された.特に遊びの仲間や種類・場所,住居形態,家族構成,保護者の運動参加,園の遊び場の適正規模,または子どもの自発性を促す保育内容,などの物理的環境,および心理社会的環境の関連性が示唆された. つぎに,「調整力」を育む運動プログラムについて先行研究を概観した.その結果,(1)子どもが体験すべき「基本動作」は,移動系,平衡系,移動系の3カテゴリー・計84種類から構成されること,(2)子どもの運動行動と目常生活との関連性について,より困難な動作(技量)に挑戦する子どもは日常生活での積極性も高いこと,また(3)特に「調整力」の発達の敏感期である4〜7歳の時期には,子どもの自主性を尊重しつつ,「基本動作」を中心に,「体力」および」「調整力」の育成に向けた,指導者(教員)の積極的な働きかけが必要であること,が明らかとなった. 調整力を育むことに寄与する要因間の関連性は複雑かつ多様であるが,生涯を通じた自律的な活動を営む上での身体活動を身につける上で,それに必要な運動(遊び)体験の効果的な学びが幼少年期において必要と展望される.
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