2007 Fiscal Year Annual Research Report
2種類の疑似高所での滞在および運動中の生理応答とトレーニング効果の差に関する研究
Project/Area Number |
18700525
|
Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
前川 剛輝 National Agency for the Advancement of Sports and Health, スポーツ科学研究部, 契約研究員 (50336351)
|
Keywords | 低圧低酸素環境 / 常圧低酸素環境 / 高所トレーニング / 低酸素トレーニング / 動脈血酸素飽和度 / 自律神経活動 |
Research Abstract |
本研究の目的は,同じ酸素分圧にコントロールされた2種類の疑似高所(低圧低酸素環境と常圧低酸素環境)で,気圧の違いによって安静および運動中の生理応答にどのような違いが生じるのかを検討することである。本年度は,低圧低酸素環境と常圧低酸素環境への急性暴露が,運動中の動脈血酸素飽和度(SaO_2)と自律神経活動に与える影響を検討した。 7名の健康な青年男性を被検者とした。被検者は高度3,000m相当に設定された低圧低酸素環下(低圧室)(気圧:701hPa,酸素分圧:147hPa,酸素濃度:20.9%)と常圧低酸素環境下(膜分離法を用いた常圧低酸素室)(気圧:1013hPa,酸素分圧:147hPa,酸素濃度:14.5%)で自転車エルゴメーターを用いた多段階の漸増運動負荷試験行った。運動は10分間の安静の後,1ステージを10分とし,連続して4ステージ行った。運動中は心拍R-R間隔およびSaO2を連続して測定した。そして心拍R-R間隔のデータを周波数解析し,自律神経指標(TP:total spectral power,LF:low frequency,HF:high frequency,VLF:very low frequency)を算出した。また各ステージ終了直前に,Borg's scaleを用いて主観的な運動強度(RPE)を問診した。 その結果,SaO_2は全てのステージで低圧低酸素環境下よりも常圧低酸素環境下の方が有意に高い値を示した。心拍R-R間隔より算出した心拍数およびRPEは,全てのステージにおいて両環境間に差はなかった。全ての自律神経指標も同様に両環境間に差はなかった。 以上の結果から,高度3,000mに相当する低酸素環境では,同じ酸素分子圧でも気圧の違いによって体内の低酸素状況に差が生じるが,それが自律神経活動に与える影響は小さいと考えられる。
|