2006 Fiscal Year Annual Research Report
「父親の不在」の解決を目指した諸施策の現状と有効性に関する研究
Project/Area Number |
18700583
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
冬木 春子 静岡大学, 教育学部, 助教授 (60321048)
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Keywords | 父親 / 子育て支援 / 地域 |
Research Abstract |
本研究は大きくは次の二点から要約できる。 1 本研究では、1990年の「1.57ショック」を契機に開始された一連の少子化対策にて、「父親」がどのように位置づけられ、「父親の不在」を解決するための諸施策が展開されてきたのかを整理した。まず、大きく分けるとそれは「雇用環境の整備」と「家庭教育支援」に分けられ、「父親」は「育児の援助者」から「育児の主体者」近年では「地域活動の主体者」と位置づけが変化していることが指摘できる。ここから、「母親だけが子育てをする」から「母親も父親も子育てをする」、さらには「地域で子育てを支援する」という行政側の子育て観が指摘できる。 2 1にあげた子育て観をふまえ、本研究では、国や地方自治体による「父親支援策」の中でも家庭教育支援事業として注目されている「父親教室」に注目し、自治体主催の「父親教室」に参加した父親と子どもを対象にした質問紙法および観察法によるデータ分析を行った。結果から、日常的な世話を「毎日」あるいは「週3〜4日」行っている父親ほど、「父親教室」においても子どもの要求や内面に敏感に応じた柔軟性のあるかかわりを行っていた。一方で、初めての父親教室において、父親も子どもも緊張するなかで、自己主張が旺盛な2,3歳児に対して柔軟なかかわりが難しい父親もいた。全体として、「父親教室」の効果として、父親が子どもと共に参加することによって、親としての自分をふりかえる機会となり、子育てや子どもに対して前向きな気持ちをもつようになったことがあげられる。また、子どもの内面や新たな子どもの一面を発見することによって、子ども理解が深まり、子育て力量の向上につながったともいえる。さらに、教室に参加することによって、子どもの要求に応える遊びの学びやより活発で応答的かつ柔軟性のある父子かかわりのきっかけづくりになったともいえよう。「父親教室」の課題としては、教室開催の回数、ネットワーキングの仕方、子育てに不安を抱える父親たちへの援助があげられる。 3 2の研究は都市部における父親と子どもに焦点を当てているが、母親就労率や三世代同居率ではかなりの地域差があることから、都市部に包摂されない子育て問題を抱える郡部に焦点をあて、乳幼児(学童期の初期を含む)を育てている母親および父親18名を対象にした聞き取り調査を行った。調査地域は農漁村や離島を含んでおり、郡部の父親においても子育てにかかわるには在宅時間が最も重要な要因であり、祖母との同居によって父親が子育てや家事にかかわることが免除される傾向にあることも見いだされた。
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