2006 Fiscal Year Annual Research Report
温和的酸素接触によるワインの熟成効果に関する基盤的研究
Project/Area Number |
18700589
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
久本 雅嗣 山梨大学, 工学部, 助手 (00377590)
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Keywords | ワイン / 酸化 / 酸素 |
Research Abstract |
ワインは、酸化が進むと香味や味の特徴を大きく変化させ、品質の劣化につながる。しかし、ワインへの軽度の酸化は、色調が良くなり、苦味、渋みが低減され、ワインの品質が向上すると考えられている。実際に欧米のワイナリーの一部では、ワインの品質向上を目的に熟成中のタンク内に人為的に微量の酸素をワイン中に放出する方法が導入されている。しかしながら、ワインに注入する酸素の使用量や酸素との接触期間などが明確ではなく、経験的に行っているところが多く、この現象の科学的根拠がないのが現状である。 そこで本研究はワインに酸素を注入し、その酸化段階を知るための新しい指標の探索を目的に実験を行った。試料は平成18年に収穫したカベルネ・ソービニヨン種で試験醸造したワインを用いた。ワインへの酸素注入量は0.5,5.0mL/L/day及び酸素無添加のもので比較した。各試料についてさまざまなパラメータを測定した結果、A_<420>/A_<520>の比の値に顕著な違いが認められた。酸素無添加のワインのA_<420>/A_<520>の値はほぼ一定であったのに対し、酸素注入したワインは一旦、A_<420>/A_<520>の値は上昇し、その後下がり、再度上昇した。その増減の変化は酸素注入量が多いワインの方が早く表れた。これは酸化の初期段階でフェノール性化合物の酸化の中間体で420nmに吸収を有するキノンが生成されることに依存すると考えた。A_<420>/A_<520>の値が増加から転じて減少する変化が見られたことについては、酸化が進行し、キノンが減少したものであると考えられた。再びA_<420>/A_<520>の値が増加の変化が見られたことについては、フェノール性化合物の酸化が一定の段階まで進行し、その重合体が形成され、それが420nmに吸収波長を持っためであると考えた。 以上より、A_<420>/A_<520>の比の増減がワインの適度な酸化段階を知る上での化学的指標になりうると考えられた。
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