2008 Fiscal Year Annual Research Report
食農教育の理論的枠組みの整理と女性農業者グループの食農教育活動の事例的把握
Project/Area Number |
18700622
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
粕谷 美砂子 Showa Women's University, 人間社会学部, 准教授 (80369446)
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Keywords | 食農教育 / 女性農業者 / 家族経営協定 / パートナーシップ / ジェンダー統計 / 男女共同参画 / エンパワーメント / 農業の多機能性享受能力 |
Research Abstract |
食農教育とは、児童・生徒に対する学校教育だけに留まらず、消費者全般を対象とした教育という面からも捉える必要がある。平成19年度は、畜産農家家族の聞き取り事例調査及び生活時間調査の結果から、「家族経営協定」が家族農業経営のWLBを実現するために有効であることが明らかとなったが、平成20年度は、消費者である都市生活者への食農教育について検討を行った。都市生活者の生活実態をケイパビリティ・アプローチに当てはめて事例的に分析した結果、「農業の多面的機能」とワーク・ライフ・バランス(WLB)との接点として「農業の多機能性享受能力」の必要性が明らかとなった。社会的・文化的生活時間の中に「自然との共生」という概念を組み込むための環境・仕掛けづくり(戦略)・時間・意識づけが必要である。その際、農業者にとって収入に結びつくということと、農業者のWLBが保たれるということが前提となる。農村および都市生活者のWLBの問題として、人と自然、人と人との関係性の豊かさを含めた「生活の質」として捉える視点が必要である。WLBとは、ペイド・アンペイドワークとその他の人間活動のバランスのことであり、生理的生活時間、労働時間、家事労働時間、社会的文化的生活時間のバランスが必要である。 日本では、農業就業人口の6割を占めている女性農業者は、生きることの最も基本的な要素である「食」と、それを支える「農業」、つまり、生産現場と消費の両面に深く関わっている。食農教育においては、生産・流通・消費・廃棄を含めた一連のプロセスを示す枠組みが必要である。それに関わる女性農業者の経済力の向上考慮されなければならない。これらの結果については、「農家家計と女性の経済力」、「ジェンダー統計視角からみた農業・食関連領域における女性と男性」として、共著の一部として執筆した。
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