Research Abstract |
本年度は, 先に行った研究の結果をもとに, わが国におけるこれからの科学教育カリキュラムの方向性について, 総合的な考察を行った。 まず, フランスにおける科学教育の特徴として, 次の点を指摘することができる。 (1)義務教育段階(小学校及びコレージュ)では, 共通基礎知識技能の習得を目指した教育活動が, 一貫性を持って展開されている。なかでも科学教育に関わる教科では, 特に科学的技術的教養の育成を目指したプログラムが実施されている。児童・生徒が身につけるべき科学的技術的教養は, 身のまわりの現実世界を理解するために必要となる知識, 能力, 態度に分けて具体的に明示されている。 (2)後期中等教育段階(リセ)では, 進路に応じた科学教育が提供されている。第1学年では, 生徒に共通の基礎的な教育が施されている。第2学年からはコース別のカリキュラムが実施されており, 文科系の生徒に対しては, 科学を利用する市民の育成に向けた科学教育が展開されている。一方, 理科系の生徒に対しては, 将来の専門家養成に向けたより高度な内容の科学教育が行われている。将来の進路や職業選択のために何を学習する必要があるかについては, コレージュの段階から教科書などを通して情報提供がなされている。 以上の特徴をふまえ, 今後のわが国の科学教育カリキュラムの方向性を検討した結果, 次の2点が指摘できる。 ・わが国の文脈に即して必要とされる科学的教養を具体的に明らかにするとともに, その結果に基づき, 義務教育段階全体を見通したカリキュラムを作成する必要がある。 ・義務教育段階終了後においては, 将来の進路に応じた科学教育を提供するとともに, 進路にかかわらず, 「科学を利用する市民」を育成するための科学教育が必要である。
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