Research Abstract |
1.ワーキングメモリを考慮した教科学習支援教材の開発 国語と算数について,ワーキングメモリを考慮した教材開発と研究を行った。国語に関しては,漢字の形の弁別,構成,読み,書きのそれぞれについて,マッチング課題を中心に課題を整備し,教材のラインアップに関して当初計画をほぼ達成した。効果検証の基礎的研究として,各課題に要するワーキングメモリの性質と対象児の認知特性,および誤書字の発生メカニズムとの間の関連を,事例に基づいて明らかにした。漢字の形態に関する情報抽出過程について明らかにし,論文発表した。 算数に関しては,健常成人を対象として,事物の個数判断の方略のひとつであるサビタイジングには,ワーキングメモリの音韻ループの関与が小さいことを明らかにした。その上で,知的障害児を対象に,小さな数をサビタイジングに基づいて2種類同時にマッチングすることが,それらの和に相当する1種の数のマッチングと比べて容易なことを明らかにした。これにより,大きな数の指導における,数の合成・分解操作の導入方法を検討可能となった。 2.生理的指標のモニタリングによる学習プロセスの評価に関する検討 課題遂行時の心拍反応をパルスオキシメータを用いて測定することにより,学習効果検証法の基礎的検討を行った。具体的には,脈波と心電図との同時計測に行い,脈波伝播時間が心拍反応波形に及ぼす影響を調査した。対象は健常成人とし,安静時とクレペリン施行時の持続的心拍変動,および2桁の足し算問題を用いた期待反応パラダイムを検討した。その結果,脈波と心電図とで極めて一致した結果を得るとともに,課題に伴う注意状態の変動を的確に検出できた。脈波測定は非侵襲かつ身体的拘束が極めてわずかなので,上記結果から,実際の臨床指導効果の測定に,脈波に基づく心拍反応測定を応用することの妥当性が確かめられた。
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