2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18700671
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小野 直子 富山大学, 人文学部, 助教授 (00303199)
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Keywords | アメリカ / 産科学 / 開頭術 / 帝王切開 |
Research Abstract |
本研究は,アメリカ合衆国において医療が専門化される過程を,特に産科学に焦点を当てて明らかにすることを目的としている。20世紀初頭まで,医療の専門分野の中でも産科学の地位は低かった。それは,出産が,かつては「教育を受けていない無知な」助産師によって立ち会われていたために高度な技術や知識を必要とする医学とはみなされなかったこと,18世紀半ば以降出産の立会人として男性一般医が助産師に取って代わったが,一般医にとって助産は広範囲にわたる医療業務の一部でしかなかったために産科学が専門分野とみなされなかったこと,そして産科学の患者は「第二級市民」である女性のみであったこと等と関連していた。従って,19世紀末から20世紀初頭にかけて,産科専門医は,他の医療分野の専門医と同等の地位と権威を獲得しようと奮闘していた。本年度は,当該時期に,難産の際の手術介入方法が,開頭術(自然分娩が不可能な際,胎児の頭を穿頭し,内容物を除いて空の頭蓋を押しつぶす手術)から帝王切開へと変容する過程に注目した。20世紀転換期,難産の際に,生存している胎児に対して開頭術と帝王切開のいずれを選択するかという問題は,医師の間で激しい議論を引き起こした。本研究では,国立医学図書館(National Library of Medicine)やヒューストン医学アカデミー・テキサス医療センター(Houston Academy of Medicine - Texas Medical Center)図書館等で収集した関連分野の専門医学雑誌における,開頭術と帝王切開をめぐる議論を丹念にたどり,技術の発達と医療の専門化,ジェンダー・身体・生命をめぐるイデオロギーの変容の相関関係を明らかにした。
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