2006 Fiscal Year Annual Research Report
焼失した竪穴住居の構築材にみられる北海道での木材選択利用の動態研究
Project/Area Number |
18700675
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
守屋 豊人 北海道大学, 大学院文学研究科, 非常勤講師 (60396273)
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Keywords | 常呂川河口遺跡 / 臼尻C遺跡 / 柏木川4遺跡 / 炭化材樹種同定 / 竪穴住居址 / 焼失住居址 |
Research Abstract |
平成18年度は、北海道東部続縄文時代・擦文時代(北見市常呂川河口遺跡)、北海道中央部擦文時代(恵庭市柏木川4遺跡)、北海道南部縄文時代(函館市臼尻C遺跡)の焼失した竪穴住居址(以下焼失住居址と表記)から出土した炭化材の一部を試料採取して、北海道東部と北海道南部の試料について樹種同定をおこない、各焼失住居址に利用された樹種構成をあきらかにした。また、遺跡の立地する地形の形成過程を一部検討した。 1、北海道東部の常呂川河口遺跡では、焼失住居址(4基)から出土した炭化材を樹種同定した結果、落葉広葉樹を主体として、針葉樹が利用されていたことがわかった。特に続縄文時代では、カエデ属、トネリコ属、コナラ属などの樹種や、モミ属が竪穴住居の構築材として存在した。 2、北海道南部の臼尻C遺跡では、縄文時代後期の焼失住居址(8基)から出土した炭化材を樹種同定した結果、落葉広葉樹を中心に利用されていたことがわかった。クリ、コナラ属、カエデ属、ブナなどが竪穴住居の構築材として存在した。 3、常呂川河口遺跡は、オホーツク海に流れ込む常呂川の氾濫によって形成された低位段丘(標高4m〜5m)に位置する。過去におこなわれた発掘調査によって、遺跡の立地した地形では、洪水などによる撹乱作用が繰り返されたことが確認されていることから、遺跡周辺の植生が氾濫源にみられる樹種であったことが推測される。 4、臼尻C遺跡は、太平洋に面した海岸段丘上に位置し、縄文時代後期の竪穴住居址が25基確認された。この内の分析した焼失住居址は、縄文時代後期中葉(5基)と縄文時代後期後葉(3基)に分かれる。後期中葉と後期後葉では、構築材として利用された樹種の構成はほぼ同様である。しかし、後期中葉では、焼失時における構築材の残存状態が上屋を想定できる状態でみつかり、後期後葉では残存状態が悪いと推測した。
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