Research Abstract |
仮設的な構築物が組みたてられる姿を景観の観点からみると,文化的に色濃い建築のいとなみが息づいていることに気づく。とりわけ,祭礼にともなって,地域総出で幟や大灯籠,舞台,山車などの組みたて式の構築物を組みあげていく様は,とくに見応えがある。こうした組みたて式の構築物が祭礼のたびに組みたてられることで,都市や集落の景観は,日常的な姿から非日常的な姿へと劇的に変貌する。 本研究課題は,仮設構築物のおりなす景観として,地域の祭礼に着目し,祭礼に際してがらりと変わる景観の仕組みを建築学の立場から捕捉するものである。この成果をふまえて,従来の景観の概念に,日常と非日常という観点を積極的に含めた新しい景観保護の提案を模索するものである。 研究の対象は,伝統的な地域祭礼が数多くのこる長野県の最北部に位置する飯山市である。平成19年度には,平成18年度にひきつづき瑞穂地区と秋津地区の祭礼について調査研究を行い,また,飯山市内の祭礼に加えて,長野県長野市の弥栄神社の祇園祭(善光寺の御祭礼)と長野県下高井郡野沢温泉村の道祖神祭についても調査研究を行った。 調査の項目は,1)祭礼の実地調査,2)各地区に保管されている祭礼に関する史料の収集である。このうち,1)祭礼の実地調査において把握した項目は,1-1)構築物の実測調査,1-2)祭礼当日の配置図の実測調査,1-3)ヒアリング調査,の3点である。これらの調査をふまえ,把握した仮設構築物について,建築史・郷土史関係の資料から歴史的な位置づけを行い,祭礼の前後でがらりと変わる景観の仕組みについて建築的な考察を行った。
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