2006 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル森林南限地域における水循環過程と凍土・水文気候との応答に関する観測研究
Project/Area Number |
18700689
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
飯島 慈裕 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究センター, 研究員 (80392934)
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Keywords | 蒸発散 / 樹液流 / フェノロジー / 土壌水分 / 永久凍土 / エコトーン / 北方林 / モンゴル |
Research Abstract |
モンゴル北部は、北(森林)から南(草原)に植生が漸移し、南向き斜面に草原、北向き斜面に森林が差別的に分布している。また、森林斜面には地下に永久凍土が分布する一方、草原斜面には認められず、その結果、南北斜面で蒸発散・流出特性が異なる可能性が示唆されている。本研究では、この特徴的な植生景観地域での水循環過程を解明するため、北向き森林斜面と南向き草原斜面を対象に、森林の樹液流測定と、草原・林床での総合気象観測から蒸発散量の推定を行なった。本研究の観測地点は、モンゴル国の首都ウランバートルの東北東約50kmに位置する、Tuul川上流のShijir川流域内の南向き草原斜面と、北向き森林斜面である。 今年度は、森林斜面にてGranier法による樹液流測定を開始し、50x50mの樹木調査結果から森林からの蒸散量を推定した。また林床での総合気象観測から林床の蒸発散量を推定した。同時に、デンドロメータで直径方向の幹生長量測定を行なった。草原斜面では、総合気象観測データから熱収支計算によって蒸発散量を推定した。観測結果から、それぞれの斜面について、蒸発散量の季節変化と水文気象条件、ならびに植物生長・フェノロジーとの対応関係を検討した。 植物生長は草原・森林斜面で違いがみられた。草原では5月上旬から展葉が始まり、7月初めに緑被が最大となった。草丈の生長は6月中旬から7月上旬までの短期間で急速に進んだ。草の枯れは8月上旬から始まった。一方、森林では、5月中旬からカラマツの展葉が開始し、6月下旬には終了した。展葉の終了時期から幹生長が進行し、一貫した生長が8月上旬まで継続した。カラマツの落葉は8月下旬から現われ始めた。森林-草原斜面の蒸発散量変動は、植物活動の季節変化と降水量、凍土の融解と、土壌水分量変動とよく対応していた。森林からの蒸発散量は草原に比べて6割程度であり、森林草原の南北斜面は蒸発散量の差を通じて水収支が大きく異なるといえる。
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Research Products
(1 results)