2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18710005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高畑 直人 The University of Tokyo, 海洋研究所, 功教 (90345059)
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Keywords | 海洋環境 / 希ガス / 同位体 / 分析技術 / 海洋化学 / 地球化学 |
Research Abstract |
希ガス元素は化学的に不活性なため、海水の良いトレーサーとなる可能性が高いが、海水に溶存する希ガスは極微量であり分析するのが難しくあまり報告されていない。東京大学海洋研究所に設置されている海水中溶存希ガス濃度分析システムを用いて、海水試料の希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)の精密濃度測定を行なった。分析した海水試料は海洋調査船白鳳丸の研究航海においてニュージーランド南方沖の南極海およびニュージーランド東方沖の南太平洋で採取したものを用いた。これらの試料はCTD装置を備えたカルーセル採水システムを用いて複数の測点において深さ方向に異なる場所から採取し、なまし銅管に移して保管していたものである。採水と同時にCTD装置により、海水の塩分、温度、水圧を測定してあり、ヘリウム同位体分析用およびトリチウム濃度分析用の試料も同時に採取してある。南極海周辺の海水のヘリウムからキセノンまでのすべての希ガス濃度を報告した例はほとんどなく、海水中の希ガス濃度を決める要因、例えば海水の混合や起源を考える上で重要なデータが得られたと考えられる。 ヘリウム同位体比の分析結果からは、南極海では海水の上下の混合が起こっていること、南極海嶺の北では南極中層水の沈み込みが起こっていることが確かめられた。同時に採取した海水のトリチウム濃度と組み合わせることで海水が沈み込む時間(大気から遮断されてからの時間)が推定できると期待されるが、そのためにはヘリウムの濃度を精密に分析することが重要であり、今回得られたデータは海水の流動を考える上で有益なデーダとなるであろう。
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Research Products
(1 results)