Research Abstract |
植物生理生態学的アプローチは,樹木の成長量のように時間的に統合された情報の解釈やシミュレーションモデルによる時空間的スケーリングに要するパラメータを提供することによって,生態系構成要素と微気象学的要素との関係についてメカニスティックな理解を導く。平成19年度は,昨年度と同様に,(1)落葉広葉樹林林冠木の個葉光合成,分光特性,生化学(クロロフィル,窒素含量)の測定,(2)林冠の葉面積指数の測定(光の透過率観測,全天写真撮影,落葉量による推定)を継続した。加えて,(3)生態系炭素収支モデルによる森林全体の光合成量GPPのモデルシミュレーション実験,(4)平成18年度に地上レーザープロファイラにより観測した林冠の3次元構造のモデルへの導入実験,(5)衛星リモートセンシングデータ(MODISの生態系総光合成生産,葉面積指数プロダクト)の取得と解析,(6)重点研究サイト(約50km^2)を対象とした流域スケールへのモデルの展開,を遂行した。 これまでに観測した林冠木の光合成特性および葉面積指数の季節変化を生態系モデルに導入したところ,森林全体のGPPは,計算実施期間4年間のうちで約10%変動することが示された。また個葉光合成特性の季節変化を考慮しなければ,Gppは20%近く過大評価されることが明らかとなった。 またこの結果をMODISのGPPプロダクトと比較した結果,MODISデータは山岳地帯での雲ノイズや地形の複雑性のために十分な精度でモニタリングができていないことが確認された。 現地での植物生理生態学的観測と衛星データの地上検証に基づいた流域スケールモデル(空間解像度100mメッシュ)の開発により,山岳地の森林生態系の構造・機能の時空間分布解析が可能となり始めた。
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