Research Abstract |
18年度は,有明海湾奥部の冬季赤潮形成種の動態に対する潮汐の影響および動物プランクトンの捕食圧効果を明らかにするために,主として以下の3点を実施した.1)有明海湾奥部の干潟-浅海域での一潮汐10時間連続観測調査の色素分析および物理水質項目のデータ解析と整理,2)海苔養殖時期の赤潮形成種に対する動物プランクトンの捕食圧を評価するための,添加する動物プランクトン量に濃度勾配をつけた現場希釈培養実験,3)水中の基礎生産に対する底生珪藻類の寄与を明らかにするために,基礎情報として干潟域の底生珪藻類の群集構造に関する調査を毎月1回実施した. 1)の一潮汐調査データを整理した結果,冬季の有明海湾奥部において,赤潮を形成する珪藻と渦鞭毛藻類が,潮流に対して対照的な時空間分布変動を示すことが判明した.鞭毛藻類の分布変動には,潮流による水塊の移流に伴う水平的な移動が卓越すること,同時に流速が弱くなる満潮時には表層へ能動的に鉛直移動を行っていること,一方,珪藻は渦鞭毛藻類と比べ鉛直的な巻き上げの影響を強く受けていることを明らかにした.この成果は2007年日本海洋学会春季大会で発表し,近日中に論文として投稿する予定である. 2)の現場培養実験に関しては,データ解析を行った結果,栄養塩を添加しない系では,動物プランクトンの濃度が増加するにつれ,1.渦鞭毛藻類のAkashiwo sanguineaは増加,2,Prorocentrum micansも増加,3.逆にProrocentrum triestinumは減少,4.珪藻のThalassiosira属は減少,さらに栄養塩添加区では,5.クリプト藻類が減少することが判明し,有明海湾奥部の冬季赤潮形成種に対するカイアシ類の摂餌選択性が明らかになりつつある.この成果は,来年度中に取りまとめ,学会発表すると同時に論文として投稿し公表する予定である.
|