2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18710009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
槻木 玲美 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 研究支援者 (20423618)
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Keywords | 珪藻類 / 鞭毛藻類 / 潮汐 / 有明海 / 植物プランクトン / 沿岸域 / カロチノイド色素 / 底生藻類 |
Research Abstract |
本研究は、我が国の良質なノリ生産に深刻な影響を与える有明海湾奥部の冬季赤潮を形成する、植物プランクトン優占種の変化を駆動する要因を、野外観測や現場培養実験を用いて検証し、ノリ生産の持続的管理に不可欠な有明海の冬季赤潮発生機構を解明することを目的とする。 湾奥部の干潟-浅海域では、干潟の底生珪藻類が潮汐によって巻き上がり、水中の基礎生産に寄与している可能性が高い。しかしこれまで、干潟底泥上の珪藻類に関する調査はほとんど行われていない。このため、本研究では、引き続き干潟の底生珪藻類に関する調査を実施した。本年度は有明海の干潟域で基礎生産を担う底生珪藻種の現存量と優占種の季節変化を明らかにするために、干潟底泥サンプルのHPLC(高速液体クロマトグラフィ)による色素分析と顕微鏡観察、底生藻サンプルの同位体分析を行った。 その結果、1)干潟域に生息する底生藻類の安定同位体比は、冬〜春に^<13>C値が増加し、夏に^<13>C値が低下すること、 2)珪藻類(Fucoxanthin)の現存量は、冬季〜初春に相対的に高く、春〜初夏に低いこと、 3)但し、死細胞を指標するPheophytin aも冬季〜初春に高く、冬季の現存量の高さは活発な生産によるものではないことが示唆された。さらに、 4)藻類を摂食する底生動物の現存量は、4月から著しく増加し夏季まで高密度が維持され、秋〜冬季に顕著に減少していること、また、 5)干潟の地形は1年を通じて高さ7cm程度変化し、秋〜冬季は堆積傾向、逆に春〜夏季は浸食傾向にあることも判明した。これらの結果から、干潟域の底生藻類の現存量が、光合成活性が高いと予想される夏季に低いのは、底生動物による捕食圧(Top-down効果)の増加と地形浸食に起因している可能性が高いと考えられた。
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Research Products
(5 results)