2006 Fiscal Year Annual Research Report
「メイオベントスは海底への酸素供給に重要な役割を果たす」仮説の検証
Project/Area Number |
18710021
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小栗 一将 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究員 (10359177)
|
Keywords | 堆積物-水境界 / 二次元オプトード / 酸素 / バイオイリゲーション / メイオベントス / 底成育孔虫 |
Research Abstract |
堆積物-水境界における酸素濃度分布は、一般に水中から浅く広くもたらされる酸素の拡散が支配すると考えられてきた。しかし、底生生物の活動(バイオイリゲーション)によっても酸素濃度分布は大きく変化する。これは、底生生物活動が海底での酸素消費やひいては有機物分解、脱窒や硫酸還元などの化学過程に対して、大きな影響を与えていることを意味する。これまでにも、大型ベントスの活動と、ベントス周辺の酸素濃度分布の時間変化を調べた結果が報告されているが、多量のバイオマスを持つメイオベントスについては研究が遅れてきた。これは、メイオベントスが生活を行う微小環境の酸素濃度分布を調べられる装置が無かったことがひとつの原因である。そこで、本研究では海底の酸素濃度分布と、メイオベントスの活動を同時に「可視化」する装置の開発を行った。堆積物-水境界における酸素濃度の二次元分布を測定する方法として、燐光の消光を利用した、光酸素センサを用いる方法がある。本研究では、まず(1)センサの平面化とCCDカメラを使った二次元酸素測定装置(二次元オプトード)を現場観測用に再構築した。(2)海底での現場観測を行い、実際にベントス活動が酸素を海底に供給する仕組みなどの観測に成功した。(1)については、現場観測のために必要な装置の小型化を行った。特に、カメラやセンサを励起するための光源を制御するための信号発生回路は、今回の用途に向いた小型の製品が見あたらないため、自主製作によって問題を解決した。(2)については、(1)で完成させた装置をJAMSTECの海底ステーション(相模湾、初島沖)に接続し、堆積物-水境界における酸素濃度プロファイルを測定した。この結果、拡散に伴い酸素が確認される深度は表層から約5mmであることが分かった。また、小型のゴカイがポンピングによって堆積物中に海水を供給する間だけ、深さ1cm以深まで、一時的に酸素が供給される様子が明らかになった。これは、バイオイリゲーションが狭い空間に深い酸素の供給を行っていることを示している。また、酸素が検出されない深さ1-2cmの堆積物中にも、活発に活動する底生有孔虫が確認された。これらの有孔虫が酸素・無酸素境界の下部環境に適応している理由として、脱窒機能を獲得していることが考えられる(Risgaard-Petersen et al.,2006)。すなわちこの結果は、底生有孔虫が炭素サイクルだけでなく、窒素サイクルについても重要な役割を果たしていることを示唆している。
|