2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18710051
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
石井 伸昌 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (50392212)
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Keywords | 放射線 / 生態系 / 機能 / 微生物 / 群集 |
Research Abstract |
土壌には多種多様な微生物が生息しており、生態系における栄養塩や金属元素等の物質循環に重要な役割を果たしている。そのため、土壌微生物群集の種構成や微生物活性の変化は、生態系の物質循環に影響すると予想される。 平成18年度は、湛水土壌に対するガンマ線照射実験により、土壌から湛水溶液へのイオンおよび元素の溶出量に対するガンマ線の効果について情報を得ることを目的とし、実験を行った。 水田土壌を井戸水で湛水し、これを1.2Gy/dayの線量率でガンマ線を30日間連続照射した。コントロールは、10cm厚の鉛ブロックを用いてガンマ線を遮蔽した。照射期間中、湛水溶液を回収し、この溶液の元素プロファイルをPIXEで分析した。溶液中の元素濃度はICP-MSおよびICP-AESで測定した。Fe(II)は1,10-フェナントロリン法により分析した。一部の陽イオンおよび陰イオンはイオンクロマトグラフを用いて分析した。 ガンマ線照射から5日後、ガンマ線照射サンプルはコントロールと比較して明らかに薄茶色に着色していた。PIXE分析の結果、照射サンプルの鉄濃度がコントロールよりも低いことが分かった。鉄は還元状態の土壌中からFe(II)として溶液中に溶出する。そこで湛水溶液の酸化還元電位(ORP)とFe(II)濃度を求めた。照射サンプルはコントロールと比較してORPが20mV高く、Fe(II)は20μg/mL低い値であった。これらの結果は、ガンマ線照射が土壌の酸化還元に影響することを示唆している。一方、硫酸イオン濃度は照射サンプルで高くなることが分かった。統計的に有意では無かったが、分析した43元素の内、^<60>Ni,^<63>Cu,^<111>Cd,^<208>Pbおよび^<238>Uの濃度がガンマ線照線量の増加に伴い、高くなる傾向を示した。今後、細菌群集構造の変化と元素およびイオン濃度変化の因果関係について検討する予定である。
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