2006 Fiscal Year Annual Research Report
バイカルアザラシPPARーCYP4を介した有機フッ素化合物の毒性メカニズム解明
Project/Area Number |
18710053
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
石橋 弘志 熊本県立大学, 環境共生学部, 嘱託職員 (90403857)
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Keywords | 有機フッ素化合物 / PPAR / CYP4 / バイカルアザラシ / PFOS / PFOA |
Research Abstract |
野生生物における有機フッ素化合物(PFCs)の汚染実態および蓄積特性を明らかにし、その毒性影響メカニズムの解明をおこなうため、peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR) -cytochrome P450 4(CYP4)シグナル伝達系への影響を明らかにすることを目的とする。本研究で得られた成果は以下のように要約される。ロシア・バイカル湖の固有種バイカルアザラシ(Pusa sibirica)を対象として、LC-MS/MSにより蓄積濃度を測定したところ、肝臓中PFCs濃度はPFNAが最も高く、ついでPFOS、PFDAの順であった。一方、血清中濃度はPFOS>PFNA>PFUnDAの順であった。これら蓄積濃度はこれまでに水棲哺乳類を対象とした既報値と比較して同程度あるいは低値であったが、PFNAおよびPFDAの肝臓への特異的な集積がみられた。バイカルアザラシ肝臓中からPPARα cDNAのクローニングを試みたところ、水棲哺乳類で初めて完全長PPARα cDNAのクローニングに成功した。野生集団のバイカルアザラシにおいて、肝臓中PPARα mRNA発現量とPFNAとの間に、肝臓中CYP4Aタンパク発現量とPFNAおよびPFDAとの間にそれぞれ有意な正の相関関係が認められた。そこでPPARα発現プラスミドを導入したin vitroレポーター遺伝子アッセイ系を構築し、PFCsによるPPARα依存性の転写活性化能を測定したところ、PFNA・PFDAを含めたPFCsによるバイカルアザラシPPARαの活性化が認められた。以上のことから、バイカルアザラシにおけるPFCsの汚染実態・蓄積特性が明らかとなり、蓄積したPFCsはPPARα-CYP4Aシグナル伝達系に影響していることが強く示唆された。
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