2006 Fiscal Year Annual Research Report
生命分子をサブユニットとする新しいナノバイオ高分子の創製と応用
Project/Area Number |
18710103
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森川 全章 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (10363384)
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Keywords | アミノ酸 / シアニン色素 / 分子ペアリング法 / ナノファイバー / 自己組織化 / センシング |
Research Abstract |
本年度は当初の研究計画に基づいて,アミノ酸とシアニン色素について分子ペアリング法を適用し,アミノ酸の側鎖構造に依存したナノ組織体の構築ならびに高次分子集合体形成に基づく新しいセンシング技術の開発について検討した. アミノ酸の水溶液と様々なシアニン色素の水溶液をコンビナトリアル的に混合したが,会合体が誘起される組合せを見つけ出すことはできなかった.これは,アミノ酸自身では相互作用に関与できる部位が少ないためであると考えられる.そこで,アミノ酸とo一フタルアルデヒド(OPA)をチオール化合物(HS(CH_2)_2SO_3^-)の存在下,室温で混合することによって,アミノ基をイソインドール基へ誘導化した.このアミノ酸誘導体とシアニン色素を網羅的に混合した結果(拡張分子ペアリング法),アミノ酸の側鎖構造に依存して色調が変化することを見出した.これは,アミノ酸誘導体とシアニン色素が分子ペアを形成し,会合体を形成したことを示す.混合液の透過型電子顕微鏡観察を行うと,色調変化のあったグルタミン酸誘導体やアラニン誘導体の場合では,非常に発達したナノファイバーが観察された.これらの混合液についてCDスペクトルを測定すると,本来,アキラルなシアニン色素の吸収帯に励起子分裂型の強い誘起CDが観測された.また,興味深いことに,その誘起CDの分裂パターンはアミノ酸の側鎖構造に依存し,かつアミノ酸誘導体自身の示すCD強度に比べて数百倍も大きいことがわかった.このことは,アミノ酸誘導体とシアニン色素が相互作用し,高度な分子集合体を形成することによって,アミノ酸の側鎖構造の情報がシアニン色素会合体の共役電子状態(色調変化)に情報変換され,かっ不斉増幅が起こったことを意味する.このように,自己組織化現象を利用してアミノ酸の情報変換・不斉増幅を行った例はこれまでに無く,新しいセンシングシステムとして期待される.
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