Research Abstract |
近年,投資家行動に心理学の成果を取り入れた行動ファイナンス(行動経済学)と呼ばれる分野への関心が学術および実務の分野においても高まっている。本研究は,現実の意思決定の特徴をとりいれた投資家行動が金融市場に与える影響を,エージェントベースモデル(コンピュータ上の金融市場における実験)および実証分析を通じて分析するものである. 本研究では,はじめに,分析に用いる金融市場シミュレーターの構築を行った.本研究は,研究の理論構築および検証に計算機実験を予定しており,その目的で,サーバシステムー式(金融市場シミュレーター)およびソフトウェア(MATLAB R2006a, S-Plus7 for Windows Enterprise版)を導入し,システムおよび分析環境の構築を行った. 当システムにおいて数多くの分析が可能となるが,本年度においては,はじめに,自信過剰な意思決定が金融市場において果たす役割に焦点を当て分析を行った.分析の結果,自信過剰な投資家が,市場においてボトムアップに発生することを見出すこと,自信過剰な投資家が,ファンダメンタルバリューを適切に反映する市場の達成に貢献しうる可能性のあることなど興味深い結論を見出すことができた. 更に本研究では,分析対象を拡張し,現実の投資の意思決定において用いられている手法について分析を行った.本分析では,年金運用を行う機関投資家などにおいて広く採用されているパッシブ運用に焦点をあて分析を行った.分析の結果,パッシブ運用の有効性を確認するとともに,パッシブ投資家が極端に多くなる場合においては,ファンダメンタルを反映しない価格付けや市場の安定性の低下などの悪影響が出る可能性のあることなど現実の資産運用手法に対し示唆に富む結論を見出すことができた.
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