Research Abstract |
高度な技術に支えられている現代社会において,複雑な製品やシステムにおける品質の欠陥は,ときとして社会に大きな損害と被害をもたらす.このため,品質を社会と消費者に対して保証する品質保証の概念が重要な意義を有する.本研究では,品質保証を実現するための信頼性工学的側面からのアプローチの開発に着手した.品質を保証する直接的な方法として検査法がある.近年ではスキップロット検査をはじめとして,製品に対する検査に関して経済性を考慮し,設計されることが定法になりつつある.本研究では,Taguchiの方法による製品品質自体に関する経済性評価法をもとに,経済性基準に基づく品質検査法を開発した.しかしながら,検査による不備,輸送中の破損等から不適合品が納品先の在庫に混入する状況は必ずしも否定できない.このとき,不適合品を顧客に配送したことによる社会的損失は非常に大きなものと考えられる.また,在庫品が工作機械の交換パーツであった場合,設備の稼動性や信頼性に影響することは明らかである.そこで,製品在庫に不適合品が混入する場合を想定し,このもとでの在庫政策について検討した.一方,システムにおける信頼性の計量的評価は重要な課題である.特に近年ではシステムは複雑かつ大規模になることから,さまざまな故障過程が想定される.本研究では,偶発および摩耗故障モードが混在するより一般的な状況を想定したシステムでの信頼性評価のための数理的アプローチを開発した.また,時間的特性も近年において重要な品質サービスにおける評価基準と考えられる.特に,リードタイムの短縮は顧客満足度を改善するものである.信頼度の向上,ならびにリードタイムの短縮を考えるにあたって,複数の設備の並列化は有効な方法である.これについて,最適な設備運用を決定するためのジョブ配置問題を考察し,経済的運用政策を得るための解法を提案した.
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