2008 Fiscal Year Annual Research Report
エクソン・シャッフリング仮説に基づく新規多機能性タンパク質の創出
Project/Area Number |
18710164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 融 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特任研究員 (40348850)
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Keywords | 結晶成長 / ナノバイオ / 移植再生医療 / ゲノム / 蛋白質 |
Research Abstract |
チタンは生体適合性に優れた金属であり、医工学生体材料として使用されている。しかし、チタン自身の骨への結合活性は弱い。そのため、移植手術後数ヶ月間、患部に負荷をかけられず、患者は不自由な生活を強いられる。チタンの骨への結合を促進する目的で、骨の無機成分であるリン酸カルシウムがチタン表面にコートされる。しかし、実用化されているプラズマスプレイ法では、超高温下でコーティングを行うため、骨に類似した結晶性をもつリン酸カルシウムをコーティングすることができない。骨類似リン酸カルシウムでチタン表面をコートするには、生体環境に近い条件下で、チタン表面にリン酸カルシウムを析出する必要が有る。生体内でのリン酸カルシウムの析出は、骨形成に関与する蛋白質により制御されている。蛋白質を用いた生体内に近い条件下で、チタン表面にリン酸カルシウムを析出させることができれば、骨結合活性に優れたチタンインプラントを開発できる。 申請者はこれまで、骨形成蛋白質の一つであるDentin Matrix Protein 1由来のペプチドと、ファージディスプレイ法により取得されたチタン結合ペプチドを組み合わせ、エクソン・シャッフリングを摸倣したコンビナトリアル蛋白質集団を構築し、その集団の中から、リン酸カルシウム結晶形成を促進する蛋白質を取得することに成功している。本年度は、チタンに強く結合し、チタン表面にリン酸カルシウム結晶を形成する蛋白質の取得に成功した。さらに、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、制限視野回折法、およびエネルギー分散型分光法など、種々の材料解析手法を用い、チタン表面に蛋白質膜が形成され、その膜を介してリン酸カルシウム結晶が形成することを証明した。本研究により得られた知見は、ゲノム・蛋白質科学のみならず、医工学分野の発展に大きく貢献すると考えられる。
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