2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18710195
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 雅人 独立行政法人理化学研究所, NMR計測技術高度化研究チーム, リサーチアソシエイト (60392015)
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Keywords | 33S / 四極子核 / 極低温プローブ / 高感度化 / メタボローム / タウリン |
Research Abstract |
33Sなどの共鳴周波数が低い四極子核NMRの高感度化を実証するために、まず室温でブロードバンドプローブを使い、タウリン水溶液(200mM)の測定を行った。サンプルには市販のタウリンを含有する栄養ドリンクを用い、重水を10%加えることによって重水素ロックして測定を行った。また、共鳴周波数は500MHzNMRで38.38MHzであった。その結果測定時間10時間(積算5万回)でS/Nが6、半値幅約0.4ppm(15Hz)のタウリンのピークを得ることができた。感度を10倍にすれば積算時間が1/100になることから、おおよそ感度が10倍以上になれば33SのNMR測定が実用的になると考えた。 そこで感度10倍を実現するために、1.線形が許す限りRFコイル直径を大きくする、2.RFコイルを極低温にする、3.プリアンプを極低温にする、を組み合わせることを行った。 ナローボアNMRマグネットの場合ボア直径は40mmであるが、その範囲でどこまでならサンプル領域として使用可能かについてマイクロコイルNMRプローブを製作し調べた。場所による磁場の均一度の変化量が半値幅以下であればサンプル領域として使えるとすると、直径10mm、高さ20mmまでなら許容範囲であることがわかった。これにより5mmの標準的なサンプルの場合に比べ感度を約5倍向上させることが可能である。 3次元高周波電磁界シミュレータを用いて上記のサンプル形状に合わせたコイル形状の最適化を行った。コイル直径は大きくなるものの周波数が低いことから、シミュレーション結果から極低温での冷却が行いやすく、製作可能なコイル形状を決定した。またRFコイルの極低温化により感度が約2倍向上することが期待できる。極低温プリアンプの検討を行った。適切なものが市販されていないため回路シミュレータを用いて設計を行った。RFスイッチも極低温にする必要があるため、減衰が早い33Sなどの四極子核のNMR信号用にRFスイッチの設計も行った。プリアンプの極低温化により2倍程度の感度の向上が期待できる。 これらを組み合わせれば感度が約20倍向上することになる。来年度はこれらを組み合わせて実証試験を行う予定である。
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