2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18710201
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
川嶋 貴治 独立行政法人国立環境研究所, 環境研究基盤技術ラボラトリー, 主任研究員 (90360362)
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Keywords | 始原生殖細胞 / キメラ / キジ目 / 絶滅危惧種 / 発生工学 / 鳥類 |
Research Abstract |
本研究の目的は、絶滅危惧問題を解決するために、野生鳥類種の始原生殖細胞(胚発生の一時期に出現する精子や卵子の祖細胞)を繁殖力の高い家禽種(白色レグホン等)の胚に移植して得られた個体(異種間生殖巣キメラ)から、野生種由来の機能性のある配偶子が生産されるか否かを明らかにすることであった。鳥類始原生殖細胞の胚間移植技術は、ニワトリ等の家禽種において既に確立されているにも関わらず、実際の野生種に適用するには、乗り越えなければならない問題も多い。まず、胚発生過程の明らかでない鳥類から、いつ、始原生殖細胞を採取すれば良いかということが問題となる。本研究では、始原生殖細胞の移植実験等に最適なモデルとなる野生鳥類種を選択するために、比較的入手可能なキジ目鳥類種(ニホンキジ、ヤマドリ、コジュケイ、インドクジャク、ニホンウズラ、ヒメウズラ等)の艀卵時間に対する発生段階の違いをニワトリと比較した。また、それぞれの野生鳥類種の始原生殖細胞における、過ヨウ素酸シッフ反応あるいはフォイルゲン反応による染色性の差異について調べ、組織化学的な特徴分析を行った。さらに、ニホンキジ始原生殖細胞をニワトリ胚へ移植する実験を行った。性成熟に達したキメラ雄個体から精液を採取し、DNAを抽出したのち、ニホンキジの塩基配列に特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果、ニホンキジのシグナルを検出した。この結果は、始原生殖細胞の移植による異種間生殖巣キメラにおいて、ドナー由来の生殖細胞に免疫拒絶反応がないことを示す点でその意義は大きい。今後は、作出した生殖巣キメラの雌雄に交配による後代検定を行い、ドナー由来の表現型をもつ子孫個体が得られるか否かが課題となる。また、本研究で確立した野生鳥類種のモデル実験系を使用すれば、異種間生殖巣内での生殖細胞分化メカニズムの解明に貢献する可能性がある。
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