2006 Fiscal Year Annual Research Report
河川における絶滅危惧ザリガニの機能的役割:地域間ならびに地域個体群間比較
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18710202
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
西川 潮 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 研究員 (00391136)
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Keywords | 絶滅危惧種 / キーストーン種 / 機能的役割 / ザリガニ / 遺伝的変異 |
Research Abstract |
ニホンザリガニは日本で唯一の在来ザリガニ種かつ日本固有種で、分布域全域から個体群の消失もしくは減少が報告されている。環境省レッドデータブックでは絶滅危惧II類に指定されている。ミトコンドリアDNA(490bp,16S rRNA)に基づく遺伝的変異の研究からニホンザリガニは道央=本州クラスターならびに道東クラスター間で独自の進化的歴史背景を持つことが示唆された.遺伝子型が明瞭に異なる北海道積丹半島の個体群ならびに道東個体群を対象として、河川生態系におけるキーストーン種としての役割を評価することを目標に野外調査を行った.北海道積丹半島の8河川(ザリガニ河川、ザリガニ不在河川4)ならびに釧路地方の6河川(ザリガニ河川3、ザリガニ不在河川3)を調査地に選び、各河川において、渓畔林のバイオマス(毎木調査)、シルトの流下量、ザリガニの密度、底棲動物の現存量、落葉の現存量、流下有機物の現存量、ならびに水質(栄養塩濃度、DOC)を測定した。その結果、積丹半島のザリガニ河川ではヤナギやミヤマハンノキなど遷移初期種が優占していたが、ザリガニ不在河川ではイタヤカエデなど遷移中後期種が優占していた。一方、釧路地方ではザリガニ河川ならびにザリガニ不在河川間で渓畔林組成に明瞭な違いは認められなかった。ザリガニの密度は、積丹地方では3.3〜11.9/m^2、釧路地方では2.9〜4.6m^2と釧路地方で少ない傾向にあった。積丹半島の個体群は急勾配の河川に適応しているが釧路の個体群は平地に適応している。これらの個体群間では環境条件と遺伝子型が明瞭に異なることから、栄養段階やエネルギー源の違いも異なると想定される。今後、現在解析中のサンプルを中心として自然実験と安定同位体解析から個体群間の長期的な機能的役割の違いを明らかにする。
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