2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18710221
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Research Institution | Kochi Women's University |
Principal Investigator |
長妻 由里子 Kochi Women's University, 文化学部, 講師 (50347663)
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Keywords | 身体性 / ジェンダー / アメリカ文化 / 視覚表象 |
Research Abstract |
本研究において、1840年代と50年代のイメージの比較を行い以下が明らかとなった。1840年代から50年代のアメリカにおいては、テレグラフ、蒸気機関車、ファクシミリなど、人をある場所から別の場所へと移送する、時空間の制限を越えるテクノロジーが次々と展開した。人々は「同時に」偏在する経験を開始する。ダゲレオタイプは、こうした"virtual technology"のひとつとして考えることができる。ダゲレオタイプを、" virtual presence" として感じ取っていた人々が、撮影の際「今ここにいる私」の存在をカメラに投射することを自らの役割とできた1840年代のダゲレオタイプの特徴が分かった。したがって、40年代の写真にはジェンダー表象は顕著な形では見られない。ダゲレオタイプの発展は、技術や機材の質の向上を支えるものだったが、ダゲレオタイプという事象を、気楽なものへと変えていった。この過程で、人物は「被写体」の位置へと押しやられていく。つまり「撮影される対象」に落ち着いて、ダゲレオタイピストの指示にしたがって、ポーズや姿勢、視線を「作る」ようになる。同時に、人々は写真を撮られることにも、見ることにも慣れ、" virtual presence" であるという感覚は薄まり、撮影時に自分の" presence" を投射するという意識もなくなっていった。50年代にSouthworth and Hawesのようなその表現力や芸術性において評価されているダゲレオタイピストが登場するが、退屈な被写体の表情を克服するため、洗練された技術で被写体に表情をつけることに成功したためだと理解できた。この50年代の技術的、商業的発展の中で、写真表現の中でも徐々にジェンダーに従った身体の描き分けがなされるようになることが分かった。上記成果については平成21年度日本写真芸術学会にて発表を予定、のち論文としてまとめる。
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