2008 Fiscal Year Annual Research Report
母子世帯を対象とする社会政策における労働とケア、家族と国家の関係についての研究
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18710224
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
田宮 遊子 Kobe Gakuin University, 経済学部, 准教授 (90411868)
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Keywords | 社会政策 / ジェンダー / 母子世帯 |
Research Abstract |
本研究は、生別母子世帯への所得保障である児童扶養手当と遺族年金の制度変遷と給付実績、給付水準の長期変化を考察した。 まず、制度変遷をたどると、児童扶養手当は手当額引き上げ、所得制限の和、対象児童の年齢引き上げという3つの政策手段の組み合わせにより、1979年までに給付改善が進んだ。ただし、児童扶養手当の拡充は、生別母子世帯への所得保障の重要性がとくに認識されていたというよは、むしろ、死別母子世帯や寡婦に対する所得保障の充実に連動して、さらに、年金への社会の関心の高まりを背景とした福祉年金の政策的引き上げに相乗りした結果であった。1985年以後は、手当額の段階支給や所得限度額の厳格化によって制度抑制が進められた。 次に、長期時系列データから児童扶養手当受給者の増減要因を検討した結果、増加要因としては離別による母子世帯の増加が主因であり、減少要因としては収入増加はわずかで、子の支給対象年齢到達によるものが大きいことがわかった。ただし、1985年の2段階支給の導入、1998年の所得限度額の引き下げ、2002年の段階支給の導入と全部支給の対象者の限定化による給付抑制の影響は無視できない。また、`2003年以降児童扶養手当削減の代替手段として取り組みが強調されている就業支援策が、母子世帯の就労収入を増加させ、児童扶養手当の給付を減少させた効果はみられない。 さらに、他の所得保障との比較において、現在の児童扶養手当の給付水準は低下していることがわかった。児童扶養手当と遺族基礎年金を比較すると、1985年までの前者は後者の70%水準を維持していたが、1986年以降は33〜50%水準へと低下した。児童扶養手当の水準を生活保護基準を指標としてモデルケースから検討したところ、現在の水準は生活保護基準の6.27%であった。生別母子世帯の母が手当を受給しながら短時間労働者の平均時給で働いた場合、ほほフルタイムで働かなけれは生活保護基準に達しないことがわかった。
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