2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中 真生 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 助手 (00401159)
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Keywords | 悪 / 苦しみ |
Research Abstract |
本年度は主に、「悪と苦しみの倫理学」という本研究課題における、理論的研究の完成に専念した。本年度前半では、『哲学雑誌』(哲学会)のレヴィナス特集、「レヴィナス-ヘブライズムとヘレニズム-」に、論文「主体の被造性(creatuarialite)-依存における自律」を寄稿するに当たって、これまで手薄になっていた分野である、レヴィナス思想におけるヘブライズムについて集中的に研究することができた。その結果、主体の「被造性」というとらえ方は、レヴィナスから見たヘブライズムの特徴をよく反映しているにとどまらず、それは彼の哲学的枠組みの中においても、目立たない形で実は中心的な役割を果たしていることが明らかになった。それは、本研究課題の主題である悪と苦しみにも深く関連している。また、『論集25号』(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部)に掲載された論文、「悪と超越-レヴィナスとナベール-」の執筆に当たっては、2005年に哲学会で口頭発表した際の原稿をもとに、レヴィナスの悪についての考察を、ナベールの悪論と対照させることによって、両者の類似点と相違点を通して、レヴィナスの悪に対する立場の独自性をレヴィナスの思想の中に位置づけつつ明らかにすることができた。 本年度後半は、ここ数年、雑誌や共著作に発表してきた、本研究課題と関連する諸論文をもとに、これまでの理論的研究を博士論文にまとめる作業を集中的に行った。一連の包括的な主題のうちに改めてそれぞれの考察を位置づけ、練り直すことによって、これまで展開してきた主張や議論をより精確に論証することができた。 上記のような本年度の研究成果により、来年度後半以降、本研究課題における実践的研究を本格的に実施する準備が、ほぼ整ったと言える。
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Research Products
(3 results)