2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村松 正隆 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (70348168)
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Keywords | クールノー / 確率論 / エピステモロジー / 統計学 |
Research Abstract |
2008年度の研究においては、特にその確率の哲学に着目しつつ、クールノーの科学認識論の全体を描き出しその成果を発表することに研究を集中した。 具体的には、19世紀フランスを主たる研究対象として、当時の自然科学(特に数学、統計学、経済学)の進展と対比しつつ学問としての「哲学」が置かれていた状況を描き出し、同時にクールノーが、カントやライプニッツを吸収しつつ、当時としては極めて独特な、自然界における不確実性を許容する科学認識論を創造していた次第を明らかにした。 クールノーは、一方で当時の数理科学の成果を吸収しつつ、極端な科学主義が提示する決定論的世界像に対して、いわゆるスピリチュアリスムの人びとが行っていたように単純に心理的場面での「自由」の存在を言い立てるのではなく、物理学を中心とする自然科学的世界像の中にも「偶然」的事象が入り込む余地があることを主張し、同時にこうした事象が発生する「確率」を計算する数学的手法を編み出している。本年度の研究は、このクールノーの確率の哲学の生成過程を明らかにし、その歴史的位置付けと重要性を明確にした。 また付言すれば、クールノーの緻密な偶然論はわが国の九鬼周造の思想にも影響を及ぼしている。本年度の研究においては、九鬼周造の『偶然性の問題』とクールノーのテキストの比較を行い、クールノーが九鬼に及ぼした影響を浮き彫りにすると同時に、九鬼の偶然論の独自性を明らかにし、これを成果として公表した。
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Research Products
(2 results)