2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代初期における複数の幾何学的自然観に関する科学思想史的研究
Project/Area Number |
18720009
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Research Institution | Eichi University |
Principal Investigator |
武田 裕紀 Eichi University, 文学部, 准教授 (50351721)
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Keywords | パスカル / デカルト / ロベルヴァル / 力 / 空気の弾性 / 幾何学的自然観 |
Research Abstract |
本年度は以下の2点について調査を行い、論文を公表した。 空気の弾性という概念をめぐって、パスカルとロベルヴァルの自然哲学の相違を検討した。それによると、双方とも空気が弾性という性質を備えていることを容認するのだが、ロベルヴァルがアプリオリな原理として空気がある一定の範囲内で膨張したり収縮したりする性質を持っていることを前提するのに対して、パスカルは、山の上にもっていった風船が膨らむというような現象を示しつつ、外部の圧力と風船内部圧力との相関関係から、弾性という性質を読者に提示するにとどまる。パスカルの物理的因果性を排除した記述は、当時としては極めて斬新であり、18世紀後半の力学の解析化のアイデアを先取りしている。 デカルトにおける「力」の概念の存在論的身分を検証した。デカルトは物体の運動を説明するために、「運動する物体がその状態を維持するために力」を持つと考える。この力なる概念は、果たして物体即延長とするデカルトの物体概念と抵触しないのだろうか。この点について、『哲学原理』の様態、属性、実体に関する議論を参照しつつ、「力」の概念は、そのいずれと考えても何らかの矛盾が生じることを示し、その結果、デカルト自然学には形而上学基礎付けに還元できない余剰な部分があることを主張した。 以上2つの論考から、17世紀前半における幾何学的自然観の内実について、従来の見解より、より具体的にその複数性を明らかにすることができた。
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