2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代初期における複数の幾何学的自然観に関する科学思想史的研究
Project/Area Number |
18720009
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Research Institution | Eichi University |
Principal Investigator |
武田 裕紀 Eichi University, 人間文化共生学部, 准教授 (50351721)
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Keywords | デカルト / パスカル / 運動 / 重さ / 幾何学的自然観 / 原子論 |
Research Abstract |
本年度は、近代初期におけるスタンダードと考えられてきたデカルトの幾何学的自然観を、「運動」をキーワードにまとめあげ、『デカルトの運動論数学・自然学・形而上学』を公刊することができた。この著作において、デカルトの幾何学的自然観は、有限量の比例関係を扱うその数学的技法によって一義的に規定されうることを示し、その形而上学的基礎付けは、かならずしもとうした幾何学的自然観を、少なくとも運動という観点から見るならば、十分に果たし得ていないことを示した。 われわれはさらに運動の原因としての「重さ」に注目し、とくにこの問題に関して、質料概念がどのようにして近代的な「質量」概念に再編成されていくかを、歴史的に跡づけた。この作業によって、従来はアルキメデスの科学や原子論の復興と関係づけられていたこの問題に対して、因果性の転換という観点からも切り込むことができた。これらの作業を通して、「デカルトとは異なった幾何学的自然観をもつた立場からデカルトを逆照射し、デカルト的な幾何学的自然観の意味を再定義する」といら本研究の目的の一つは、おおむね達成することがでさた。 デカルト以外では、パスカルの幾何学的自然観をその自然学の方法から探求した。具体的には『パンセ』におけるesprit de justesse(的確の精神)という、数多い『パンセ』研究においてもこれまでほとんど注目されてこなかった語に注目して、パスカルにおける科学的精神の射程と、科学的論証構造を支える「原理」の意味を明らかにした。この研究から、実験を重視しつつも、それ以上に適切な規模の論証モデルを構築することによって、有効な科学的言説を紡ぎだそうとする、パスカルの論理主義的な傾向を指摘することができた。
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