2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 明人 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 助教 (90360875)
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Keywords | 宗教 / 軍隊 / 戦争 / キリスト教 / 従軍チャプレン / 日本軍 / 特攻 / 平和 |
Research Abstract |
本年度は宗教と戦争に関する研究の一環として、一つはアメリカ軍における従軍チャプレン制度の分析、もう一つは戦艦大和の沖縄特攻から生還した吉田満の戦争・平和論とキリスト教信仰に関する考察をおこなった。前者については日本宗教学会における口頭発表をおこなうと同時に出版の準備にとりかかりはじめ、後者については2月に39頁の論文として発表した。 アメリカ軍チャプレン制度の歴史については、すでにそのアウトラインをまとめているが、本年度は特にアメリカの戦史・軍事史、および宗教史を整理しながら、チャプレン制度史との対応事項をまとめていく作業をおこなった。アメリカ研究の分野で「軍事」や「宗教」は極めて重要な要素であるが、それら両者の交錯部分にあたる従軍チャプレンという存在についての研究は、これまでのアメリカ軍事史・宗教史の理解にも新たな視点を提供するものとなるだろう。 二点目の吉田満論であるが、彼は『戦艦大和ノ最期』の著者として知られている人物である。吉田はそれを発表した後も戦争・平和について多くのエッセーを書いたが、それらは単に自らの戦争体験だけに基づくものではない。戦後彼はすぐにカトリックに入信し、後にプロテスタントに改宗している。吉田による戦争や平和に関する一連の文章は、そのほぼ全ての根底に信仰の問題が横たわっているのである。彼の主張や思索は平和論や日本論であると同時に、宗教的省察という性格を持っている。そうした面を重視して吉田の議論を読み返していくと、一人の作家としての吉田理解についても、宗教と戦争という普遍的な問題についても、新たな洞察が得られる。
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Research Products
(3 results)