2006 Fiscal Year Annual Research Report
古典イスラーム・セクシュアリティー思想の現代的意義の研究
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18720017
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
青柳 かおる 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20422496)
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Keywords | スーフィズム / 婚姻 / セクシュアリティー |
Research Abstract |
私の研究の全体構想は、最も重要な古典イスラーム思想家の一人であり、現代のイスラーム教徒にも大きな影響を与えているガザーリー(d.1111)の思想、とくにセクシュアリティー(性行為、生殖、婚姻、女性、ジェンダー、性愛観、生命倫理などのさまざまな性に関する問題)の議論を分析し、現代のムスリムによる性の議論、性に対する考え方と比較することにより、古典思想の現代における影響、意義を考察するというものである。 今年度は、その構想の中の文献学的な分析を行い、ガザーリーと彼以外の古典思想家の著作も参照し、古典イスラームのセクシュアリティー思想を明らかにした。具体的には、ガザーリーの代表作『宗教諸学の再興』やそのほかの著作の分析を中心とし、ガザーリーに影響を与えたスーフィー(イスラーム神秘主義者)、マッキー(d.998)の『心の糧』、ガザーリーとは傾向の異なる神秘思想家、イブン・アラビー(d.1240)「の『メッカ啓示』『叡智の台座』などに見られる思想と比較することにより、今まであまり知られてこなかったイスラーム固有のセクシュアリティーの議論を文献学的に導き出した。 以上の研究成果については、二本の論文にまとめ、研究成果を取り入れたイスラーム概説書を執筆した。 さらに、イスラームの生命倫理に関する事典項目(「イスラム教の死生観」「イスラム教の他界観」『応用倫理学事典』丸善)を執筆し、翻訳(「イスラームにおける生命倫理」『生命倫理百科事典』丸善)を行なった。またドバイとカイロに出張し、アラビア語文献等を収集し、研究成果について宮城学院女子大学キリスト教文化研究所公開研究会で発表した。
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