2008 Fiscal Year Annual Research Report
古典イスラーム・セクシュアリティー思想の現代的意義の研究
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18720017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青柳 かおる The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (20422496)
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Keywords | イスラーム / ガザーリー / 婚姻 / カラダーウィー / 女性 |
Research Abstract |
本研究の全体構想は、最も重要な古典イスラーム思想家の一人であり、現代のイスラーム教徒にも大きな影響を与えているガザーリー(1111年没)の思想、とくにセクシュアリティー(性行為、生殖、婚姻、女性、ジェンダー、性愛観、生命倫理などのさまざまな性に関する問題)の議論を分析し、現代のムスリムによる性の議論、性に対する考え方と比較することにより、古典思想の現代における影響、意義を考察するというものである。 今年度は、古典文献のみならず、現代の思想家の女性観、性愛観についても分析した。具体的には、現代イスラーム世界に大きな影響力を持つ法学者のカラダーウィー(1926年~)や、イスラーム原理主義過激派の元祖とされるサイイド・クトゥブ(1966年没)の弟、ムハンマド・クトゥブ(1918年~)の著作を参照した。これらの著作を踏まえて、イスラームにおける婚姻論、女性論を導き出した。 以上の研究成果については「古典時代と現代におけるイスラームの比較婚姻論」という題目で中東調査会・日本イスラム協会共催、第11回イスラームとイスラーム諸国「理論と動向研究会」において発表し、女性問題、生命倫理問題を中心に、11世紀のイスラーム思想家ガザーリーと現代の法学者、カラダーウィーの議論を比較した。ガザーリーは女性隔離等の保守的な女性観を持っているが、カラダーウィーは働く必要のある女性への配慮など現代に合わせた解釈をしている。一方、ムハンマド・クトゥブは保守的である。 また「ガザーリーにおける二つの欲望」を執筆し、ガザーリーの思想における食欲と性欲の意義を明らかにし、両者を比較することにより、ガザーリーのセクシュアリティー思想をさらに追求した。なおオマーンに出張し、現地調査および文献収集を行った。
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