2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における沖縄の包摂と排除--柳田国男と伊波普猷をめぐる思想連鎖
Project/Area Number |
18720021
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
三笘 利幸 Kyushu International University, 経済学部, 准教授 (60412615)
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Keywords | 沖縄 / 排除 / 包摂 / 日琉同祖論 / 民族学 / 南島 |
Research Abstract |
本研究は、柳田国男と伊波普猷からはじまる思想連鎖という観点によって、近代日本における沖縄の位置を、排除と包摂を同時にはらんだダイナミックな思想史として明らかにしようとするものである。一昨年度、昨年度と同様に、柳田国男および伊波普猷について、精緻なテキスト・クリティークを行いながら、彼らの思想を明らかにしていった。とくに伊波に比重をおきながら研究をすすめ、伊波の1906年の論考「沖縄人の祖先に就て」という論考を、伊波が後にこの論考に加えた改訂の様子が分かるようなかたちで復刻し、解説を加えた。重要でありながら、直接参照することが難しい状況であった本論考を復刻したことは本研究にとっても、ひろく伊波研究にとっても大きな意義がある。また、伊波が柳田からの影響を受け、その思想を保持しつつ変化させていく「日琉同祖論」についても、この復刻した論考を含め、とくに初期の伊波にこだわりながら研究をすすめた。その一部はすでに論文として発表し、さらに、柳田との接触、そして伊波の「日琉同祖論」の変化について研究をすすめた。これは伊波の論考にひとつひとつ立ち止まりながら、その思想の成立過程を丹念に追う手法をとった研究であり、地道な作業でありながら、沖縄の排除と包摂というダイナミクスを根底からあきらかにするための必須の作業である。本年度中にすべてを論文のかたちで発表しなかったが、引き続き論文のかたちにまとめたいと思う。伊波の沖縄という独自性の強調と、強烈な同化志向とが、柳田に刺激されながら、屈折した形で現れる様は、単純な論断を許すものではなく、丹念にそれを解きほぐして考察し、まとめていく必要があると考えられる。
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Research Products
(2 results)