2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720022
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 千佳 東北大学, 大学院・文学研究科, 助手 (50400198)
|
Keywords | ヴェネツィア / 木版挿絵 / 巡礼記 / 図像解釈 |
Research Abstract |
15世紀イタリアの画家ジョヴァンニ・ベッリーニがその画歴の後期に制作した寓意・神話主題作品群について、制作年代と注文主の検討を含め、多様な図像源泉からその制作環境を再構成を試みた。またそれにより、ベッリーニのもう一つの側面であるこれら16世紀を境とした寓意、神話主題に対する取り組みの諸相が、15世紀後半から16世紀初頭にかけてのヴェネツィアの宗教的・社会的背景と密接な関わりを持つことを、個別の作品分析によって明らかにするため、作品分析を中心に考察を行った。平成18年度は、《聖なる寓意》(1490年頃)の作品分析を中心とし、制作年代、注文主、図像内容など多くの未解決の問題に加え、特徴である分割された画面構成の視覚源泉の検証とそれによって導き出される図像解釈の検討を行った。なかでも、視覚的源泉と考えられる1486年出版の巡礼案内に付された、木版挿絵のヴェネツィア図および1493年の木版挿絵の画像資料調査を現地ヴェネツィアのコッレール図書館およびマルチアーナ図書館にて画像史料の撮影をあわせて実施した。また、こうした画像史料の収集および調査に加え、テクスト部分の精読と調査を行うことにより、当時のヴェネツィアにおける巡礼の浸透とこうした木版画の流布、および作品との関連について検討した。同時に、作品中に見られる隠遁のモチーフとの関連から、注文主として想定されるヴェネツィア貴族ガスパロ・コンタリーニ、パオロ・クエリーニが当時隆盛していた観想的生活について綴った書簡の検討を中心とし、図像源泉としての木版画との関連および巡礼テクストからの検証を行った。これについて、修道院思想についての一次文献調査をヴェネツィア国立古文書館及びヴェネツィア、マルチアーナ国立図書館にて行い、15世紀後半当時の宗教、文化状況が作品に及ぼした影響について考察した。以上の資料収集で得られた結果について、今年度は最終的に論文として成果発表とした。
|
Research Products
(1 results)