2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720025
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高岸 輝 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 准教授 (80416263)
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Keywords | 美術史 / 日本史 |
Research Abstract |
十五世紀における、絵所預周辺でのやまと絵制作に関して、絵巻を題材に様式的な分析を行った.応永二十一年(一四一四)の清掠寺本「融通念仏縁起絵巻」は、鎌倉時代後期の「春日権現験記絵巻」で高階隆兼が打ち出した濃厚華麗な彩色と、精確な建築描写を継承し、六名の絵師が早典復古的画面を競作'してのる。永享五年(一四三三)、足利義教が河内の誉田八幡宮に奉納した「誉田宗廟縁起絵巻」(誉田八幡宮蔵) は、絹本に描かれた作例である.紙本に描かれた「神功皇后縁起絵巻」(同蔵) と同時に制作され清和源氏の宗廟に納められた.絹本の「春日権現験記絵巻」と紙本の「玄奘三蔵絵」が藤原氏の宗廟春日社・興福寺へ奉納された先例が意識されたものと考えられる.義教奉納の二絵巻は、粟田口隆光周辺で制作され、特に「誉田宗廟縁起絵巻」の画面は、「春日権現験記絵巻」を範とした明晰さと、絹本独特の謹直さを基盤にしながら、彩色にほ清凉寺本と共通ずる明るさが漂っている。こうした復古的な流れは、応仁の乱を境に変化する。乱後に制作された絵巻には、二つの相反する新様式を示す絵巻が出現する。第一の様式はやや椎拙な描写と濃厚鮮明かつ装飾的な画面をもつもので、文明十四年(一四八二) の「慕帰絵」(西本願寺蔵)第一・七巻が代表的な作例である.逆に、淡く澄んだ彩色によって水彩画に近い効果を示すのが土佐光信による第二の様式である。こうした二つの新様式は、近世絵画の基盤となっていく.
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