2007 Fiscal Year Annual Research Report
共和制崩壊前後のシエナにおける宗教イメージに関する包括的研究
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18720035
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
松原 知生 Seinan Gakuin University, 国際文化学部, 准教授 (20412546)
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Keywords | ルネサンス / マニエリスム / イタリア絵画 / ジョヴァンニ・ディ・ロレンツォ / シエナ / トスカーナ大公 / メディチ家 / フィレンツェ |
Research Abstract |
本年度の研究成果は大きく3つに分けられる。まず8月27日から9月7日にかけて、ナポリおよびその近郊で作品の調査を行なった。次に、昨年度に引き続き、1555年の共和制崩壊以前のシエナにおける聖画像崇拝についての考察を深あた。さらに、申請時の「研究計画・方法」に従い、共和制滅亡以後のシエナにおける芸術と政治の関係についても研究を着手した。以下、この3つの成果について順に略述する。 まずイタリア現地調査では、ナポリ市内の聖堂(特に托鉢修道院の付属聖堂)におげるに中世の聖画像崇拝の状況を確認するとともに、共和制末期にシエナから同地に移往して活躍した画家マルコ・ピーノの諸作品を調査した。ベッカフーミの死によってシエナにおいて潰えたマニエリスムの展開の可能性が、彼の弟子ピーノによってナポリにもたらされ、大きく開花したことが理解された。 次に、共和制崩壊以前の聖画像崇拝に関主ては、論文「〈白〉の画家」において、.画家ジョヴァンニ・ディ・ロレンツォの1520-30年代における活動と、同時代のシエナを取り巻いていた政治状況を関連づけて論じることで、ジョヴァンニが古画の再受容や様式的画顧主義の流行において果たした役割を明ちかにした。ジョヴァンニの様式的側面については最近ようやく研究が深まりつつあるが、同時代の歴史的背景との関連について体系的に考察したのは、この論文が初めてだと思われる。 最後に、共和国滅亡援の時期をめぐっては、論文「カラスとトスカーナ大公」において、1570年頃におそらくフィレンツェの画家がシ手ナの一聖堂のたあに制作した《ペストの聖母》を論ずることで、シエナを支配下に置いたフィレンツェ大公の政治的野心が宗教画の中にどのように反映されているかを推測した。この時期のシエナ絵画については従来ほとんど研究されてこなかったが、同時期の特異な作品について、様式のみならずその歴史的コンテクストに関しても考察を加えることで、今後のシエナ絵画研究のために新たな分野を開拓できたと考える。
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Research Products
(4 results)