2006 Fiscal Year Annual Research Report
宋代の三館秘閣の活動とそれに伴う美術作品の調査研究
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18720040
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Research Institution | The Museum Yamatobunkakan |
Principal Investigator |
塚本 麿充 財団法人大和文華館, 大和文華館学芸部, 部員 (00416265)
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Keywords | 宋 / 三館秘閣六閣 / 海外書 / 太白名山 / 観書会 / 曝書会 |
Research Abstract |
本年度は、宋代宮廷における重要な文物収集と公開機関である三館秘閣六閣について、以下の研究を行った。 (1)海外との文物交換(『大和文華』115号) 三館秘閣六閣は宋朝の権威を国内外に示すためにその収蔵文物を、皇帝が近臣とともに鑑賞する空間である。その中でも重要な展示物になったのが海外からの方物であった。その具体的な作品として、様式的にも10世紀日本人の書法作品と認められる董其昌『戯鴻堂帖』所収の「海外書」を取り上げた。本作には米はいや張誠一の跋がつき、日本から当時さかんに北宋に贈られた日本文物の遺風を留めるものであることを指摘した。また当時の北宋美術鑑賞界における尚古気風に作風が合致することを示し、三館秘閣の東アジアにおける文物交換の意味を論述した。 (2)皇帝の書法(『美術史論集』第7号) 東福寺には「太白名山碑」はじめ宋皇帝の御書碑拓が多数伝来している。これらは宋代に於いては、宮廷を中心に下賜され、また皇帝崩御後は三館秘閣六閣を中心に再収集された。宋代にはこのような皇帝御書が、下賜・収蔵・献上を通じて社会を循環していく機能を有することを指摘した。それは宮廷の観書会において皇帝御書が重要な展示物であったためである。このような御書展示の需要が、歴代に書をよくする皇帝を生み出していくことを論述した。 その他に「芸術帝王のコレクションとその時代一徽宗皇帝と後白河法皇一」(大和文華館日曜美術講座、2007年3月18日)を行い、宋代三館秘閣と日本の代表的な文物収蔵庫である蓮華王院宝蔵を、公開性、収蔵品、建築において比較し、12世紀東アジアにおける文物の収集公開の差異性を指摘した。 なお、台北・故宮博物院で行われた「大観」展を参観し、『景徳四図』をはじめ多くの宋代美術を実見し多くの新知見を得た。この成果は「古物が作る社会一台湾の誇り、中華の宝:故宮博物院八十周年「大観」展参観記」として、『美のたより』No.158(大和文華館)および、『LOTUS』No.27に発表予定である。
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Research Products
(3 results)