2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦後期日本の政治的・芸術的前衛と記録文学についての基礎的研究
Project/Area Number |
18720046
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鳥羽 耕史 徳島大学, 総合科学部, 助教授 (90346586)
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Keywords | 日本文学 / 戦後文学 / アヴァンギャルド / 芸術運動 / 夜の会 / 安部公房 / 岡本太郎 / 花田清輝 |
Research Abstract |
国内外の図書館・文学館・美術館において前衛文学・芸術と記録文学についての資料収集を行い、当時の関係者へのインタビューも行う一方、安部公房や岡本太郎、花田清輝を中心とする戦後期日本の政治的・芸術的前衛と記録文学に関する事実の整理を行った。 「キャッチャー・岡本太郎-<夜の会>前後の芸術運動-」では、戦後の芸術運動の出発点ともいえる<夜の会>を、花田清輝と共に立ち上げた岡本太郎に焦点を当てて分析した。彼らの会合の名前の由来となった油彩画「夜」は、岡本太郎のパリ体験の記憶と戦後の新しい運動の出発との結節点で成立しており、「夜」に注目することで岡本太郎と彼らの芸術運動の性格がはっきりしてきた。 清水良典編『現代女性作家読本5松浦理英子』の「「『裏ヴァージョン』-フロッピー・ディスクからは発見されえない手記-」では、1990年代以降の前衛作家とも言える松浦理英子の『裏ヴァージョン』について、安部公房が最初にワープロを使って小説を書いた時期とは異なる技術史的な問題があり、それに着目したトリックが仕掛けられていることを指摘した。 口頭発表では、「サークル誌ネットワークの広がりと密度-一九五〇年代文学のプロフィル-」を日本近代文学会11月例会(2006年)にて、「詩運動のローカルな中心:高知『鉄と砂』のネットワーク」を思想史・文化理論研究会第140回例会(2007年)にて行った。これらは、昨年度発表した「サークル誌ネットワークの可能性-『人民文学』と『新日本文学』から見る戦後ガリ版文化-」で論じたテーマを個々のサークル誌に即して検証したもので、前者では新潟、後者では高知のサークル誌を扱った。サークル誌は政治的前衛及び記録文学に関わる重要なメディアであるが、どのようなものが発行されていたかを含めて不明な点が多く、今後の課題の一つとなる。
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