2007 Fiscal Year Annual Research Report
戦後期日本の政治的・芸術的前衛と記録文学についての基礎的研究
Project/Area Number |
18720046
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鳥羽 耕史 The University of Tokushima, 総合科学部, 准教授 (90346586)
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Keywords | 日本文学 / 戦後文学 / 運動体 / 安部公房 / 日本映画 / テレビドラマ / 開高健 / 富士正晴 |
Research Abstract |
前年に引き続き国内外の図書館・文学館・美術館において前衛文学・芸術と記録文学についての資料収集を行い、当時の関係者へのインタビューも行いつつ、安部公房や開高健、富士正晴ら戦後期日本の政治的・芸術的前衛についての著書・論文を発表した。また、サークル誌についての調査も継続しており、『現代思想』35巻17号の座談会でコメントした他、論文も準備中である。 『運動体・安部公房』では、安部公房の19 5 0年代の活動に焦点を絞り、その芸術的・政治的前衛としての運動の軌跡を追った。第一部で運動体の活動を、第二部で芸術運動と文学の問題を、そして第三部で広義の〈記録〉の運動と政治の問題を追究し、同時代の文化・政治状況の中での新しい安部公房像を提示した。 「紙の中の不可耕土」では、60年安保の問題と北海道の戦後開拓の問題とを重ね書きした小説の成立と意味について、開高健が「社会派」となる軌跡を追いながら解読した。 「映像のスガモプリズン」では、戦犯やスガモプリズンを描いた映画・ドラマの系譜を辿りつつ、小林正樹監督・安部公房脚本「壁あつき部屋」と岡本愛彦ディレクター・橋本忍脚本「私は貝になりたい」の持つ対照的な意味について、同時代の政治・文化状況の中で明らかにした。 「『新日本文学』の富士正晴」では、政治からは距離をとり続けた作家と思われてきた富士正晴について、その『新日本文学』への寄稿を中心に読み直し、加害者としての日本を描くという政治的スタンスの一貫性について明らかにした。
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