2008 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀初頭・江戸における上方小説流入システムの研究
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18720047
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
木越 俊介 Yamaguchi Prefectural University, 国際文化学部, 准教授 (80360056)
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Keywords | 国文学 / 江戸時代後期 / 出版 / 上方 / 流通 / 本替 |
Research Abstract |
本年度は、次の調査・研究を行った。 (1)文化九年板行の読本作品のうち、未調査のものの書誌をとる。 (2)(1)に関連する文化10年以降に板行された読本作品の調査を行う。 (3)挿絵を描いている一峯斎馬円という人物の伝記を調査する。具体的には大谷大学に所蔵されている『機応冥顕(きおうみょうけん)』という資料を複写した。 この結果、上記(1)の文化九年板行作品群、すなわち、『復讐双三弦』『絵本玉掻頭』『信夫摺在原草紙』『金鱗化粧桜』『桜木物語』に関わる板元が江戸の西村与八・前川六左衛門、大坂の秋田屋太右衛門・河内屋嘉助といった面々であることが判明。そして、諸記録から、『復讐双三弦』『信夫摺在原草紙』が当初予定されていた冊数より増やして板行されていることが分かった。さらに、(2)にあたる『蜑人少女玉取草紙』、『二葉の梅』『和漢の染分』『蛍狩宇治奇聞』などを巻き込んだ「本替(交易)」の有り様を、諸板元の関係性から整理してみた。決定的な結論は得られなかったが、本屋の提携のあり方を仮説を立てながら示した。これらの成果を、「読本の東西往来-文化期の事例を中心に」として『上方文藝研究』5号(2008.5)に発表、さらに「文化九年の本替」としてまとめ、雑誌『日本文学』に投稿し、57巻10号(2008.10)に掲載された。 また、(3)については資料内容を検討したものの、伝記事項の調査にめぼしい進展は見られなかった。ただ、この人物が上記作品の多くを手がけ、またこの時期に上方から江戸へ移住しているので、板元の提携を助けるパイプ役になっていた可能性があることを論文に盛り込んだ。
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Research Products
(2 results)